Cityscapes



作家の言葉
Cityscapes(シティースケイプス)

    繁雑な都市は人間観察をするのに魅惑的である。自然の中では私は宇宙の情感を覚えるが、都市で私を感動させるのは、人間の情緒である。
都市文化と娯楽は人に感興を催させるものだ。が、今住んでいる田舎から都会に来ると、私の感覚は圧倒されてしまう。いったいこのサーカスのような環境の中 で、人々は自己の感覚というものを維持でさるのだろうか。どうやって、都市の時間の洪水の中に、否み込まれないようにしているのだろうか? どこでバランスをとっているのだろうか?
   私がピンホール・カメラで撮る都市の写真は、私の人間観察への興味とフォトジャーナリズムの延長である。シャッターは音が立たず、ビューファインダーの技 術の必要無いピンホール・カメラは、どんな邪魔もせずに私に写真を撮らせてくれる。長い露出時間は、人々と場所が時間の流れとともに作用するのを、じっく りと観察させてくれる。そうして私はいつのまにか彼らの空間へ入り込み、彼らと体験を分かち合うのである。
   ピンホール画像では、"社会"は時として正体不明に現れる。人々はそこに
"いる"がしかし、そこに"いない"。いったいどのくらいの人々が、現実的に"覚醒"していてその瞬間を意識しているだろうか? 何人の人が、今ここを断 ち切って、自分自身の世界の中に埋没しているのだろうか。堅い建物の線は、柔らかい人間や暖かい光とは対称的に鋭くきり立つ。公園は砂漠を感じるものに とってオアシスとなり、広々とした空は、コンクリートジャングルの隙間から光を射しこます。けれども都市に磁力を与えるのは、洪水をなす人間と、その思想 と、そしてエネルギーなのである。

エドワード.レビンソン  Edward Levinson
1998
 

Edward Levinson (Nov. 1997)