Europe Deja vu

写真展
「ヨーロッパ・デジャ−ヴュ Europe Deja vu」                  
 ヨーロッパは常に、そのロマンチシズムと郷愁の想いで人々を魅了してきた
 今、そのヨーロッパは新しい時代に入っている。東西の壁は消え、幾つかの
国々は分離した。それでもなお、ヨーロッパは合体して共に歩んでいる。この
劇的な時の間、世界中からの人々が〃旧き伝統〃や〃旧きもの〃がまだ存在し
ているかどうかを確かめに、ここに集まり続けている。日本に二〇年近く住ん
でいる私は、日本から出て〃西側〃諸国を訪ねる度に、新鮮な空気を一息つく
感じがする。
 文化と雰囲気を求める私はヨーロッパを選ぶ。最近の旅で、私は初めて東欧
諸国を何か国か訪ねた。そこは私の祖先が出たところなのだ。自然なことだが
人は大きな都会や場所や人々のエネルギーに引き寄せられる。地にぬかずく人
々の美しさをもつ地方は私の魂に触れるが、それは私の写真のもう一つのシリ
ーズのテーマとなっている。
 ヨーロッパを巡ると、物事の〃旧さ〃に対する畏敬の念が感じられる。とく
に東欧では、既視感(デジャ−ヴュ)すなわち帰郷の感覚が蘇る。市場で老い
た女性たちを見るのは、私の心にある永遠の祖母の顔を見ることだ。カウンタ
ーの向こうにいる男は長いこと不明だった私の〃叔父〃かもしれない。道を行
く物売りは兄弟だろうか。
 観光地で私は人間観察をし、裏道を歩いて洗濯物干しや遊ぶ子供たちを探す
そして自分への慰労にカフェに立ち寄り、苦いコーヒーによって私の潜在意識
にある記憶を沸々とたぎらせるのである。
 記憶は写真になり、写真は記憶になる。
エドワード・レビンソン 1999年 夏

 

Edward Levinson (January,1999)