Shadows Talk


作 家の言葉                    

「Shadows Talk」

  私は十代の頃から、世界を動かすリズムを感知していた。野原に
  寝転び、頭上に浮かぶ雲を見つめ、そして宇宙との一体感を感じた
  初めての時を、今でも思い出す。そのような体験は非常に単純なこ
  とに思える。だが日常生活の繁雑さの中で、その感情をいともたや
  すく忘れてしまうのはなぜだろう。
   私の日々は、来たるものと為すこととで構成される。陽が昇ると
  その日は輝く。太陽は自然の秩序に従い、私の活動は時としてその
  動きに応じて決められる。私は光を注視し影を追う。光と影が、舞
  う蝶のように、のんびりした犬のように、疾走する馬のように動き
  回って遊ぶのを見守る。
  「存在のエッセンス」は、まさに自然によって為される作品のシリ
 ー ズである。光はそのすべての形態に見られる。影は様々な声で語
  る。これら二つの力の統合を観察すると、新しさと古さ、過去と現
  在、可視と不可視が見える。私にとってピンホール写真は、この二
  つの世界を繋ぐ糸を作り出すことなのだ。それは、明るさと暗さが
  自然な方法で寄り添うバランスを、探求することなのである。
   ある場面は私の過去を晒す。あるものは、私のはるかな祖先のル
 ー ツに達する。またあるものは未来を想像させてくれる。けれども
  そのどれもが私を興奮させるのは、今、ここにしかない貴重な瞬間
  だからである。ある意味ではそれらは個人的であり、私の生活の記
  録であるから特別なのだが、しかし同時に、他者にとっても何らか
  の意味あるものだと私は信じている。
   私たちは皆、ある種の似た記憶や、郷愁や、既視感を共有してい
  る。それは私たちに感動を与える陽の当たる風景、雑踏、聖なる場
  所、あるいは静物であるだろう。私たちがそれを見、何かを受け取
 っ て私たちの旅を続けるなら、そのどれであっても良いのである。

エ ドワード・レビンソン
  2002年

Edward Levinson (2002)